大道芸術館の落語会を終えて

 

 

 深夜の遊園地、乱歩の世界、賑やかだけど寂しい……そんな場所やな~と思いながら、人形(ラブドール)たちに囲まれて私小説落語をやった。

 

 人形たちが「心」をもっているのが判る。最初恐怖を感じた。


 その場所は、向島の民家の真ん中にある大道芸術館。ラブドールやエロい絵が展示されている美術館である。

「私小説落語~月の光編」、 都築響一さんと羽光のトーク、中入り、「私小説落語~知ったかぶり編」、「私小説落語~胸の痛み編」、 という流れで口演した。

 

お客様がひく心配はないので。いつもより伸び伸び口演できた。

記録用に主催者が撮影してくれた写真で、自分の高座姿を確認する。美女の人形に囲まれて着物着て着座する僕は、アートっぽくみえた。

 

僕ら演者からすれば、口演する場所は、気にならない。噺に入り込めさえすればどんな場所でも落語は出来る。

 

しかし、なるべくなら、無地の壁や、襖(末廣亭の高座の後ろは襖である)、金屏風など和の雰囲気で演じたい。江戸時代を想像させる背景が望ましい。古典落語の登場人物が引き立つからだ。

 高座の横に、花瓶が置いてあったり絵がかかっていたりしたら観客の想像力を欠き、やりにくい物なのだが、逆にこれだけ人形があると、乱歩の世界に入って語っている気にすらなってくるから不思議だ。



都築さんは、恰幅の良い優しそうなおじさんだが、一目見て侮ってはいけない人物だと判る。

 

トークは、まるで雑誌のインタビューをうけるように、都築さんの質問に淡々と答えた。
落語を知らない人にも興味を持ってもらえたトークだったと思う。

(2023.04.25)