1999年、週刊少年マガジンでギャグ漫画新人賞(2人で70万円だったと思う)を受賞した。
漫画家である同級生のぞむ君に、原作を提供し、「新世紀笑伝説爆烈Q」という短編漫画が、マガジン本誌に掲載されたのだ。「GTO」や「金田一少年の事件簿」などのヒット作を掲載し、当時400万部を誇っていた講談社の『週刊少年マガジン』本誌に掲載されるのは凄いことだった。
僕は、いっぱしの作家としてデビューした気になって勘違いした。
担当の編集者がついて、打ち合わせ時には、高級なレストランでご馳走してくれ、タクシーで帰らせてくれた。
出版業界が不況とはいっても、まだ20年前は経費が潤沢に使えたのだろう。
完全に良い気持ちだった。作家というものに、いわれなき憧れがあったのだ。
たまたま、持ち込み希望の電話に出た新卒の若手編集者が、僕らを最初の担当編集者となったのだ。
編集者との出会いは運命である。
しかし、良好な関係だったのは最初のうちだけで、連載企画は難航し、再び僕らの作品がマガジン本誌に掲載されることはなかった。
連載案は、編集会議に通らず、副編集長に作品を見せてくれることすらしてくれなかった。
担当編集者が、本当に僕らの方向性や作品を好きでいてくれるのかすら疑問に感じてきた。
雑誌だから売れる物を作らないといけないのは分かる。しかし、自分たちの資質がその雑誌と合わなかったらどうなのだろうか。
だんだん、疑心暗鬼になっていき、講談社マガジン編集部を自ら離れた。
それから何社か持ち込み、数年後、『週刊ヤングジャンプ』で週刊連載が叶い、単行本を二冊出すことになる。
そこまでが、僕が同級生だった漫画家のぞむ君と共に活動した作家遍歴である。
週刊連載当時、読者アンケートは嫌だったし、読者に左右されて作品の方向性が決まることに疑問を感じていた。その考えは、創作とは何か? 作品とは何か? という答えの出ない思考に向かうので、ここでは書かないが、とにかく僕は担当編集者のお気に召す作品を作ることだけを考えて創作していたと思う。
編集者の都築響一さんと対談することになった。
既存のメディアが観たことの無い視点から現代を切り取る伝説の編集者と呼ばれ、現在は、東京の向島で自身のコレクション美術館「大道芸術館」の運営もされている方だ。
対談に向けて、都築さんの著書『圏外編集者』(朝日出版社)を読んだ。
「創作」に関する答えがそこにあった。
都築さんは、僕がかつて接したどの編集者とも違っていた。
都築さんは、売れる物を作る(ヒット作品を作る)、そして編集部の利益を上げる……ことに躍起にならず、そこを本質としなかった。そして、結果的に企画をヒットさせ成功を収めた。つまり、興味あること、自分が面白いと思うことだけを追求し続け、それを独自の切り口で編集・提供すると、自然と売れたのだ。何という天才であろう……そして何と格好いいのであろう。
しかし、都築さんは、自慢として語るのではなく、自分の成功の秘訣を読者である僕(売れてない表現者)に、哲学的な意味を持って伝えているようだった。
売れるかどうかは、結果次第だから悩んでも仕方が無い。それよりも自分が面白いと思うこと、興味があることを追求し、やり続けることこそ、意味があり楽しいんだよ、と。
<関連落語会情報>
大道芸術館 落語会
笑福亭羽光 墨東「艶」噺
開催日:2023年4月22日(土)
時間:17:00開場、18:00開演∔懇親会(自由参加)
会場:大道芸術館 museum of roadside art 2階 茶と酒 わかめ(東京・向島)
参加費:6,000円(税込) 大道芸術館の入館料3000円込+1ドリンク付 ※事前予約制
内容:【落語】笑福亭羽光 【トーク】都築響一さん+笑福亭羽光
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